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アメリカン・スナイパー [戦争ドラマ・戦争アクション]

★満足度80点

愛国心を持つ者同士が戦えば、そこには悪も善もない。
イラク戦争は「対テロ戦争」だが、過激派や原理主義者たちも、各々の掲げる正義はあるだろう。
正義と正義がぶつかれば、宗教論争に似て終わりはない。永遠の平行線。

この映画は、お涙ちょうだいもなく、クリスをことさらヒーローに仕立ててもいない。
クリント・イーストウッドの主観は極力排除され、至極客観的に作られている。
言い換えれば、事実をありのまま伝えクリスの内面を脚色していない。
それが故人に対する敬意であるように、エンドロールも無音。観客の感情を恣意的に操作していない。

よくあるフェイクのアクション映画では主人公が敵を倒すたびに爽快感を味わうが、クリスが誰かを撃つたびに、本能的に気持ち悪くなる。まるで自分が銃を構えたような緊張感。
目に見えない速さで飛んでくる武器が、隣の人間を肉塊に変える。
虚飾のない戦闘シーンの生々しさは見ていて緊張を伴った。

タヤが言う。「あなたが守りたいものはここにある」と。
積極的に海を渡って、戦闘地域で仲間を守る。
それって、勝手に人の芝生に入ってけんかをふっかけているのに等しい。
海の向こうで誰かを殺すたびに、国内でテロが起きる確率が増えていく。
では何から守ってるのか。イラク戦争はただの自己満足ではないのか。
クリスは自問自答しただろうか?
それとも暗いテレビ画面に映るのは、助けたい仲間のことだけだっただろうか。

世界大戦下の状況などと違い、国に帰れば誰も戦争を意に介さない日常。
ものすごい隔絶だと思う。イラクから帰ってきたクリスが、まっすぐ帰宅できずにバーで過ごすシーンは涙を誘う。

反戦映画ととるか、愛国映画ととるかはこちらに委ねられていると思う。
でも、アメリカ人には直視して欲しい。愛国心の拳を振りかざすたびに、憎悪が生まれていることを。
政治ゲームで疲弊するのは、良心を愛国心に置き換えた一般人。
国を守ると信じた行為は、戦闘地の一市民を戦闘員に変えるだけ。
もういい加減、神を持ち出して自己満足に浸るのはやめて欲しい。
敬虔なイスラム教徒と違って、アメリカのキリスト教徒は神を大義名分の隠れ蓑にしていると言いたくなる。
国を守りたいなら、戦争をやめなければ。

人間には「羊と狼と番犬の3種類がいる」と教えたクリスの父。
そこに「良き羊飼い」の選択肢はないのか。


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6才のボクが、大人になるまで [ヒューマンドラマ]

★満足度75点

■誰にでも等しく時は流れる

特筆すべきいかにも「映画的」なことは起こらない。
それなのに、まるで自分の人生のことかのようにのめり込んでいる。
原題はボーイフッド(少年時代)なのだが、多分40代以降の世代の方が、グッとくるものがあるのでないだろうか。
劇中、メイソンの成長とともに「青春あるある」のオンパレードになるのだが、それよりも「(人生が)短すぎる」という母親のオリヴィア(パトリシア・アークエット)の振り絞るセリフが、最後に胸にズシンと響く。

孫に銃をプレゼントしたり高校卒業を祝うパーティを開いたりと、アメリカと日本では文化が違うところも多々あるが、メイソンの一家が織り成す生活は国を問わず普遍的なものばかりだ。

個人的に親が三回離婚しているので、メイソンやサマンサにすごく共感した。
自分ではどうしようもない環境の変化に「すごくムカつく」と叫ぶしかない子供の無力さ(笑)。

メイソンは初めから繊細な感受性を持っていて、そのイノセントさを12年も表現し続けたコルトレーンは凄い。
一歩引いた目で家族を、社会を見つめ続け、でも決して誰を責めるわけでもない優しい男の子。
悟ったような口ぶりもするが、その実自分の世界に入り込むことで安心感を得ている多感な状態を、自然に演じていた。

成長するのは子供だけではない。
いつまでたっても子供のような夢を見ながら現実をごまかす実父のメイソンsr(イーサン・ホーク)に、共感する人も多いのではないだろうか。
社会と折りあいをつけるのは、いつも女の方が早い(笑)。

そんなイーサン・ホークの役どころはダメンズ一歩手前だったけど、傲慢な養父との生活で無口になった子供たちに「会話ってのはこういうもんだ」と正面から向き合った姿は良かったなぁ。
個人的には彼も助演男優賞もらってもいいと思ったよ。

160分は映画としてはとても長いのに、描かれていない部分をもっと見たい!という物足りなさも。
特にオリヴィア。デートシーンはないので、彼女がどうしてダメンズばかり捕まえてしまうのか気になった(笑)
他にメイソンがラブラブだった彼女との破局までの道のりとか…
振り返れば最初は順調だった恋って、いつ歯車が狂ったのか不思議に思うことって、多いよねぇ…。

どんな人生を送っていても、誰にでも等しく時は流れる。
人生って滑稽で思い通りにいかなくて、いつも物足りなくて。
きっとほとんどの人は自分の人生に満足してない。
そんな平凡な大多数の人間への愛情あふれる映画。
時間を共有しながら半生を追体験し、せつなくなりました。


〉〉映画メモ


ひとつだけ気になることが。
大学へ進むメイソンに、先生がひとしきりエールを送ったあとに「毎日フロスもしっかりかけてね」というのです。
これって、メイソンの息が臭いことをさりげなく注意してたのかな?それが失恋の1つの要因だったりして(笑)
家庭が複雑な子供は不衛生になる傾向にあるので、もしかしてそういう意図が…?考えすぎ?
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