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命の子ども [ドキュメンタリー]

★満足度85点

いのちの子ども [DVD]

いのちの子ども [DVD]

  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2012/02/24
  • メディア: DVD

■宗教と人間の本質の矛盾がまざまざと

冒頭でパレスチナ人の少年が「ぼくたちはすでに死んでいるんだ。例え死んでも神のご意志だから怖くはない」と言うシーンがある。

それは、「息子を助けたいのは殉教者にするため」という、母親から発せられた言葉とリンクする。
難病で何人も子供をなくし、今度こそ息子を助けたいと一心に願っていた彼女の姿を、冒頭から同情しつつ固唾を呑んで見守ってきた観客は、度肝を抜かれる。
映画監督と同じように、私もその台詞には愕然とした。
ドナーを必死で探しあてたとき、安堵のあまり泣き叫んだ彼女の姿からは到底想像できない。
というかあまりに矛盾している。

案の定それは、イスラエル治療を受けることに対して、同胞からの批判や嫌がらせを受けての弁護的な台詞だった。
しかし、全くの演技だったとも思えない。
日々ミサイルでパレスチナ人を殺しているイスラエル人が、なぜ命命と騒ぐのかと、皮肉めいた侮蔑を多少なりとも感じた。

原理主義者ではないにしろ、敬虔なムスリムたちのアラーに対する忠誠心はすごい。
わたしたちは、その考えがどのタイミングで彼女らに芽生えるのかを知らない。
感覚的にわからない。

でも息子を助けたいと思う母親の想いが、宗教の戒律に板挟みになっているのはわかる。
本当に宗教は彼らの心の灯火になっているのだろうか?

宗教による「頑なな思い込み」は弊害だ。
イスラエル人監督とエルサレムをめぐるやりとりで、歴史を認識しているにも関わらず、「あそこは私たちの土地」と信じて譲らないのは、通常ルーツを遡ってその発祥や所有を重んじる私たちの感覚とは違う。
「ユダヤ人は神との約束を守らなかったからエルサレムに住めなくなり、真に救済の神託を授けられたのはムハンマド」というのが、彼女たちの真実で真理。本当に、これでは中東の平和は永遠にのぞめないだろう。

しかし中東に江戸時代のような平和が続いたなら、「アラーのためなら命を惜しくない」と彼らにいわしめるだろうか。
西洋社会が中東を追い込んでしまったため、彼女らを頑なにさせているだけなのではないだろうか。

このドキュメンタリーで垣間見たパレスチナの惨状を見ると、いちいち人の死に対して敏感に心が反応していたら、とっくに狂人になってしまうだろうと思う。

イスラム教典には「攻撃や侵略をされたら戦ってもいい」とある。
それは正当防衛と同じ理屈で、その考え自体には特殊性はない。
絡み合った憎しみの連鎖は、中東だけの責任ではないと世界が自省しなくてはいけないのに、シオニストたちの移住で混迷はさらに加速した。

「私の息子の命がイスラエルとパレスチナの一大騒動になるのはおかしい」というのが、彼女の本音だろうと思う。
せっかく助かった命なのだから、登場した一家には、どうにか生き延びていって欲しいと思う。


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