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フェルメール展~光の粒子に包まれて [■ART]

■フェルメールとレンブラント~17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち

絵画ファンにはおよそ予想がつくことですが、展覧会のタイトルのフェルメールもレンブラントも各1点ずつ。
ですが、もちろん見る価値は大いにあります。そのほかのアーティストの作品も本当に素晴らしいのです。

【風景画家たち】では、細やかな木々のさざめき、波のきらめき、【建築画家たち】【海洋画家たち】ではその精密な描写、【静物画家たち】では恐るべき写実能力、【肖像画家たち】は美化することなく上流階級の品を描ききり、風俗画では伸びやかに生き生きとした庶民の生活と空気感を伝える。


【マタイの召命】では聖書主題でも帽子に羽飾りをつけるなど衣装は当世風。
風景画には必ず鳥が描かれる。鳥のシルエットがあることで、絵画のバランスがぐっと良くなっている。
【水車小屋】では屋根が傾ぎ瓦も破れている様子、【牛と羊飼いの少年のいる風景】ではオランダの生活に馴染みの牛がゆったり横たわる。季節の移ろいが新鮮。

当時のオランダではイタリア風の景色を描いた絵画が流行っていたそうで、ヤン・パプティスト・ウェーニクスはイタリアに渡航した4年後に【地中海の港】を描いている。コリント式円柱が足場の崩れた土塁に無造作に建っていたり、港に牧牛がいたりと、イタリア?と思われるアイテムが散逸していて面白い。

【マリア教会の翼廊】では負傷兵らしき片足の男や犬がじゃれあっていて、当時の教会では本当にこのような光景だったのだろうとのこと。ロイヤルプリンス号の拿捕】イングランドとの激戦を経て、オランダ側が一戦で勝利した実際の事件を描いている。

恐るべきは「豪華な静物画」と呼ばれるジャンルの静物画。富裕層などが自分の富を知らしめるように、居間に飾ったそうです。どれも凄まじい程の写実ぶりで、もう驚嘆のため息しかでない。
特にウィレム・ファン・アールスト【狩りの静物】の、逆さに吊られた雄鶏雌鳥の羽の様子、死んだ目が凄かった。

肖像画は当時の絵画界では低い位置づけだったそうだが、レベルは高い。
各個人の欠点である特徴を隠さずに、かつ人物の品位を損ねないよう描いている。
この時代、黒いプロケードのコートと白い襟が正装だったようで、首をぐるりと囲む円形のフリルに、切れ込みの入った袖からは白いシャツがのぞく。ーロッパ各国でこれだけ服飾文化が違うのも面白い。
ちなみにフェルディナント・ボルが、レンブラントのもっとも成功した弟子だったそうです。

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そしてフェルメール【水差しを持つ女】
印刷物と実物は、彩度や明度がまるで違います。印刷物は非常に濃いのですが絵はもっと明るくて、朝の光の粒子が部屋を穏やかに満たす、その空気が閉じ込めらているようで本当に素晴らしい。
水差しに反射するタペストリー、窓に反射する空の雲。頭巾から透けてみる髪の毛など、全てが綺麗です。

ちなみにルドルフ・デ・ヨングの【ヴァージナルを弾く女性】ヤン・ステーンの【恋の病】の女性が、同じようなガウンを着ています。フェルメールも同じ様な着衣を着た女性がモデルになっていたりします。流行だったんでしょうね。

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ヴァージナル.jpeg

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最後にレンブラントの【ベローナ】ギリシャ神話の正義の女神アテナのことですが、全く神々しくなく美人でもない。
鎧の胸当てが小さすぎる気もするしバランスが悪い・・・と思っていたら、モデルは婚約者の可能性があるとのこと。
【夜警】などが素晴らしすぎるせいか、ずっと眺めていたいと思えるほどではなかった。

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およそ70年後、ハウブラーケンという研究者が1560-1660年がオランダの黄金期だったと嘆く。
オランダはこの後古典主義へ傾倒していく。
日本の狩野派や伊藤若冲のように、芸術はある高みまで極まれますが、それは一瞬の事なのかもしれませんね。


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ボッティチェリ展 [■ART]

近日中に終了するこの2つの絵画展、ボッティチェリ展とフェルメールとレンブラント展を見に行きました。
駆け足で両方鑑賞したが、1~2世紀ほど違う年代とはいえ、これほどまでに対照的なのも面白い。

ボッティチェリはルネッサンス、宗教画を軸にしての絢爛豪華な天上の楽園を。
後者は民衆や静物を描いた写実的な絵画。
両展覧会とも80点数ほどだったのが丁度良い。

■ボッティチェリ展

ボッティチェリだけで30点も来日した、本当に大回顧展。私はドント(円形絵画)の【聖母子、ヨハネ、ミカエルとガブリエルを以前目にしたことがあり、ミカエルの表情を見て強烈にそのことを思い出した。

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ボッティチェリの特徴である恍惚とした不思議な視線の先には、鑑賞者の像は結ばれない。
自分の背後を越えて、遠い存在に思いをはせるように聖なるものたちは意識を常に上に向けているのである。

しかしこれだけ聖母子像を連続して眺めるのも面白い。
当時の絵画は、聖人の着る着衣を「信仰」の象徴として青、「慈愛」を赤で描く。
なので、まるでマリアが絵画から絵画へと渡り歩いているように、同じ服を着たマリアが頻繁に登場するのである。

平行に絵画をみると、被写体が歪んで見える。
特に後期の【聖母子と洗礼者ヨハネ】【ホルフェルネスの頭部を持つユディト】などは頭部が顕著。
殆どの絵画は下から見上げる高い位置に置かれていただろうから、それを考慮してしゃがんでみると、無理に見えるポーズも、斜めに歪んだキリストの頭部も丁度良くみえる。
うつむき加減に控えめなマリアが人間を見下ろす構図になると、その表情には高貴さと多少の冷ややかさが加わる。
神に選ばれた処女マリアは純潔さを高め、人間は益々卑しさを恥じ入る。
人間を異次元に連れていく絵画の力、本当に凄いなぁとしか言いようがない。教会と芸術で、当時の庶民は催眠にかかったようになったでしょうね。

ちなみに今度来日する「クラナッハ」も描いた【ホロフェイスの首をもつユディト】
美女が首切りを行うというその劇的な光景と、篤い信仰心をも同時に描けるからか、芸術家に非常に人気ですね。

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【書物の聖母】
首をひねりマリアを見上げる幼子キリスト。の目には叡知と慈愛が宿っているようで、何か言いたげです。
マリアは、≪ヴィーナスの誕生≫のヴィーナスと同じように、瞑想しているような悲しみをたたえた表情。
金糸のベールが美しい。
よくみるとうっすらキリストの頭に光輪、左手首には受難を暗示する棘の冠、掌には3本の槍。
これからのキリストの行く末を案じているマリアと、「心配しないで」と受け入れる準備がすっかり整っているキリストという雰囲気ですね。

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初めて見たのは【磔刑のキリスト】
木の十字架にキリストの絵を直に描いているのである。後ろに回ると、ちゃんとキリストの背面が描かれている。
正面からみると本物の彫刻とみまがう出来。

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高島屋でピカソ展とミカド珈琲 [■ART]

■ピカソ展 ルートヴィヒ・コレクション

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2月下旬、高島屋で鑑賞しました。
ほとばしるイメージを何でもいいから書かずにはいられないという風に、陶器、磁器、銅版ありとあらゆる素材に書き付けられたシルエット、シルエット、シルエット。
ピカソの頭のなかには黄金比のようにあらゆるデザインがしみついて、筆をとれば手がよどみなく動き出し、構図に迷うことがなかったのではないだろうか。

今回は、絵画はなりをひそめ、皿や壺、エッチングなどが占めた。 キュビズムの影響色濃い時代だった。
闘牛が好きなピカソ、群集の頭部の足し引 きがうまい。単純な線で「熱狂」を表現。 こういった線は模写してもうまくはいかないだろうな。
二部目は彼に惹き付けられた様々な写真家が、彼を被写体にしたポートレートの数々。ピカソからは、包み込むようにおおらかで明るいけれど、ゴッホの太陽のようにどろどろしたエネルギーも感じた。太陽のようなブラックホール…。

批評家ではないから見等外れな意見かもしれないが、彼は現代の「デザイン」というものにつきまとう、「この表現手法に至るまでの過程」を理解され初めてその良さがわかるというものに、芸術を変化させてしまったのではとも思う。


ミカド珈琲店

ピカソ展のあとに映画オデッセイ】を見に行きました。その前に一服。 ここのモカアイスクリームは絶品。
アイスコーヒーにモカアイスが乗っているメニューもあるのだが寒かったので、ホットコーヒーとモカアイスを別々に注文
その二つを交互に口に運ぶ。これもありです。幸せ。
ブレンドコーヒーは酸味がやや強いけど後味は軽い。
寒い冬には至福の時。

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ルーム [ヒューマンドラマ]

★満足度80点

■「世界」の新鮮さを体験する

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唸った。 とにかく唸る。
脚本に、母親役のブリー・ラーソンに、 そしてジャックを演じたジェイコブに。

生まれたときから狭い納
屋の世界しか知らないジャック。 そこから脱出したとき、誰もがほっとして、これで問題は解決したと思う。
でもそうじゃない、空さえ見たことのなかったジャックにのしかかってきた「世界」は、私たちの想像を越えてはるかに広大で、目まぐるしかった。

本当に辛いのは、監禁後なのだと思い知らされる。「HAPPYなはずなのに」失った時間が 徐々にジョイにのしかかり蝕んでいく。 普通に振舞って子供らしくして欲しいの に、ジャックは部屋にいたときと同じように、ずっと私のそばにいる――。
世界は広い、もっともっと好奇心をもって欲しい、やっと出れたのだから、私を束縛しないで欲しい! ジョイのもがき苦しむ姿に、監禁されていた年月の重さを知る。

でもちゃんと子供はわかってるんだよね。少しずつ、彼のペースで心の扉を開いていく。 急がないで、ママもゆっくり歩いて?というように、至極マイペースに。その証拠に、部屋を見て彼は「縮んだの?」という。
世界の広さに、徐々に馴染んできた証拠に。

そしてさよならを言う。 彼にとっては、大好きな母親と一緒で、 もしかしたら幸せだったのかもしれない場所に。
幸せ、不幸という概念もなく過ごしていた時間に。

ジャックが部屋に行きたいと言ったときはぎょっとしたけど、子供の方が幸せの本質をちゃんとわかっているのかもしれないと思った。
彼に背中を押されるように、過去に決別し、やっと心の自由への一歩を踏み出すジョイの姿に熱いものが込み上げた。
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スーパーラグビー サンウルブズ1・3戦目 [■スポーツ観戦]

■スーパーラグビー

サンウルブズの1・3戦目を秩父宮で観戦しました。
第1戦は終始スクラムで押し負けていたウルブズが、後半意地を見せ、急造チームなのに、「やれるんじゃない?」と観客の期待もあがった一戦でした。
観客席からは自然発生的に狼の遠吠えの応援が始まったり、オリジナルの応援歌を作ってきたグループがいたりと、自由な雰囲気。「皆で作り上げていく」というワクワクと興奮が、会場を包んでいました。

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↑立川、堀江、吼えるフィル・ヨーン

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↑太鼓のパフォーマンス

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↑やっぱりね、と会場の誰もが思った瞬間

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↑リアキ・モリや稲垣

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↑引き上げる面々。少し御疲れの様子

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↑出番のなかったデレク・カーペンター、グッとしてるエドワード・カーク、ピッとしてる真壁、トシ・ピシ

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↑目が腫れている大野選手

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↑メインスタンドの客のサインに応じる木津選手

2戦目はシンガポールでチーターズと。
一点差という非常に悔しく、非常に勿体無い、勝てる!試合でした。
前半山田のハットトリックで湧きに湧くも、後半試合の展開についていけずあっという間に逆転。
ペナルティーキックが二回入っていれば、そして、エドワード・カークがシンビンにならなければ…と思いがちだけど、スポーツにおいて全てが100%うまくいくはずはない。向こうもミスはあったのに勝ったということが、実力差なんですよね。
ただ、この試合のジャッジはジャパン側に厳しいとは思いました。新参者への洗礼なのでしょうか。

そして第3戦目、19日は生憎の雨、対レベルズ。
今回が一番連携ミスが目立った。スタメンを2、3名入れ替えての挑戦。
見る場所でたまたま目に付いたのですが、交代で初出場と思われるデレク・カーペンターもあまり上手くいってませんでした。敵陣からは左サイド突破されることが多かった気がします。
ハンドリングエラーもあり、雨によるスリップの影響もあったかもしれません。
堀江キャプテンは負けインタビューでも鷹揚としていて、勝てないことの焦りや苛つきは見られない。
エドワード・カークはいつも熱く、敵とドツキあっている。
もしかしたら、敢えてラフプレーをして、味方に喝を入れているのかも?

今回、スタッツをみると、ウルブズのボール支配率は高いものの、レベルズにターンオーバーされまくり。
タックルミスも桁違いに多く、素人目には雑な内容に感じました。
疲れがあるのかな?2戦目の悔しさが精神的負担になっているのかしら。今後も応援したい。

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↑真田陣太鼓の演舞がありました

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↑人気の高いアダム・トムソン。でかい・・・

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↑ラインアウトの成功率も相手が上回りました

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↑エドワード・カークのお辞儀が可愛い


■初回のスタンド外イベント

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初回はお祭り騒ぎ、試合前に広瀬さん、試合後に大西さんのトークショーがあり、大好きな【き乃はち】のライブパフォーマンスもありました!
会場前にはそれなりに人が集まるも知名度は高くないみたいで、ノリはいまいち。めちゃかっこいいのに!
龍馬伝のテーマ曲も手掛けたんですよ~!
この日は着物袴ではなく、サンウルブスをイメージした赤白の切り返しのシャツ。
ゲームのキャラクターのようで似合っていました。

広瀬さんは、エディ監督の「超切れる」エピソードや、鬼のような訓練の話など、雑誌やテレビでお馴染みの話をより詳しくしてくれました。スーパーラグビーの観戦は、「このあと結婚式があるので」残念ながら見れずということでした。

試合終了後は大西さんの試合振り返り。
購入したフラッグにオートグラフ貰っていたのでやや遅れたものの、主要なことは聞けました。
やはりスクラムの息があっていないので修正しなけばならないこと、移動スケジュールが非常に厳しいのがネックだが、他のチームに叶わないことはない、と期待を込めていました。
大西さんとのジャンケンによる勝ち抜きプレゼント争奪戦では、あえなく初戦敗北。
勝者は全員子供でした。動体視力がいいのかな?

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↑吉木りささん。トーク内容が前日のJスポ生放送と少し被った


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「黒人のいない」アカデミー賞2016 [★映画こぼれ話]

先週やっとNHKで放送されました。
毎年見ないと気がすまない、一大イベント!

WOWOWをやめてしまったので、ノーカットは見れず…今年のダイジェストの悲しいところは、主題歌賞にノミネートされた歌手のパフォーマンスがカットされていたこと。
毎年各賞発表の合間に差し込まれるので、楽しみなのだが…もしかしたら今年は演奏自体なかったのかなぁ?
でもまあ、今年亡くなった人の追悼でデイブ・グロールの生歌が聴けただけでもラッキーです。


フー・ファイターズ

フー・ファイターズ

  • アーティスト: デイブ・グロール
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1995/07/05
  • メディア: CD



さて、今年は「白人のためのアカデミー賞」と揶揄され、スパイク・リーやウィル・スミスなど黒人のセレブが批判したり授賞式をボイコットしたりと騒ぎになりました。

司会のクリス・ロック
はどうするのかな~と思っていたら、のっけから堂々と斬り込み持論を展開し、作品賞にノミネートされた白人を黒人に差し替える映像を使うなど、ブラックジョークで式をうまく料理して「黒人のアカデミー賞」に変えてしまった。やるねぇ。

もちろん、冒頭のクリス・ロックの書いたシナリオにgoをだした、アカデミー協会も懐が深いというか、一枚上手、とも思うのです。

クリス・ロックの言うことを要約すると…黒人が黒人のアカデミー賞を作ったり、黒人の会員を増やして黒人にばかり投票しても意味無いじゃん、そういうことじゃないだろ?!ってことだと…。
「でも偏見が無い訳じゃない、いい仕事をしている黒人もいるんだぜ、もっと公平に目を配ってくれ。司会のボイコットを促されたけど、俺じゃなかったら、誰が言うんだ?」…ってことだと思う。

第三者からすると、今年は黒人主演の記憶に残った映画もなかった気がするし、なんかたまたまじゃないのか、これは人種差別アレルギーじゃないのか…?などと思う。

それに、映画業界の成り立ちを考えると致し方ない部分も。
白人が発展させてきた文化でもあるし、会員に白人が多いのも伝統的というか。それが少しずつ変わってきて、今は寧ろ多様性を表現できていると思う。

例えば日本で歌舞伎役者に白人や黒人がいないっ!ていう言いがかりがあったら、ナンセンスじゃないですか。
酷く突飛な例だけど、このようにある程度ルーツに敬意を払わなくてはならない文化というものがあるのだから、何でもかんでも急激に変革を求め、数を合わせろ、というのはおかしいかと。
逆に数の帳尻あわせにこだわると、芸術性を無視することにもなると思う。

そこをクリス・ロックも「(糾弾する人々を)仕事の無い黒人たち」と超皮肉っていたのかな。

勿論業界人しか知らない、ギャラが低いなどの問題(女性アクターの方が男性アクターよりギャラが低いことは昨年パトリシア・アークエットが指摘)もあるのだろうけれど。
ただ、ノミネート作を手掛けたスタッフたちは、黒人をけなすために作品を撮った訳じゃない。ただいいものを作った、それだけ。ノミニー候補になったのは、あくまで結果論だと思ってほしいな。
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オデッセイ [SF]

★満足度75点

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■あるがままを体験した稀有な人間

去年の傑作【
インターステラー [Blu-ray]】に出ていたマット・デイモンと、ジェシカ・チャスティンが今作品でも似たような境遇に立たされる役で出演。
ジェシカは父親を帰還させるべく、重力の謎解明する天文学者マーフィー。
マットは移住可能な星を探し、一人未開の地で助けを待つマン博士。 彼に抱く大衆のイメージを逆手にとって、とんだ食わせ者を演じていたが、今回の主役、植物学者のマーク・ワトニーは正反対の性格。
持ち前の明るさと、目の前のことに一つずつ取り組む冷静さで、絶体絶命の状況を生き延びる。

火星の荒野を眺めるワトニー。こちらも自然と孤独と自由について思いをはせる。
ワトニーがログを吹き込むのは、自分の生死に関わらず後世の記録のためでもあるが、自分自身で自分の存在を認知して、安心を得ているようにも思えた。
孤独な状況下では、他者がいれば容易に実感できる自己という存在を、「考える自己」を自分自身で拠り所にしなければならない。我思う、故に我あり」という格言が頭をよぎる。

だからこそ、クルーに自分の生存が伝えられていないことを知ったワトニーは、その決断を下したNASAに怒りをぶつける。
助けに来て欲しいことよりもまず先に、生きて存在していることを知って欲しい、そのことで喜んでくれる人がいる、それを思うだけで自分も力を得られる・・・。くづ く、人間は不思議な生き物だなと思う。

ワトニーが一人火星で禅問答を繰り広げている間、地球では命とカネを天秤にかけて様々な駆け引きが行われている。
火星にも見えざる手が干渉し始め、領有権だのなんだのとワトニーを制限し始める。

ヒトは社会的な生き物で、社会から切り離されると生きていけないのだが、それが少し窮屈で時にまどろっこしい。
かといって所属している世界から手を離す勇気は、ほとんどの人にはないだろう。

だからこそ、ヒト社会のしがらみを超えて純粋でまっすぐな思いを貫く宇宙飛行士たちの、勇気ある行動に胸を打たれるし、死を直面にしても、「犠牲になるのは俺だけで十分」と堂々と言えるワトニーが堪らなく羨ましい。
ラスト、足下に芽吹く物言わぬ同志に「ハイ、ディア」と囁くワトニー。
自立して何にも侵されることなく本能の赴くままに芽を出す植物を、もしかしたら彼は少し羨ましくも思ったかもしれない。

体ひとつ、知恵と折れない精神力で生き抜いた人しか持てない大らかさと清清しさ。
彼は、自分はなぜここに?などと煩悶しない動物が持つ、「あるがままの姿」に近づいた稀有な人間なのかもしれない。


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プリデスティネーション [SF]

★満足度95点


プリデスティネーション ブルーレイ&DVD セット (初回限定生産/2枚組) [Blu-ray]

プリデスティネーション ブルーレイ&DVD セット (初回限定生産/2枚組) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • メディア: Blu-ray




輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫SF)

輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: ロバート・A. ハインライン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/01/23
  • メディア: 新書




■流れる時から外れてしまった哀しい存在

自分を傷つけ、自分に恋し、自分を抱き、自分を産んで、自分を誘拐し、自分を殺す。

すごい話だ。

ハインラインの原作を読んでいなかったことで、気持ちよく騙された。
だが配給会社の宣伝は明らかにミスリード。キャッチコピーやトレイラーでは、イーサン・ホークと犯人が様々な時代を行き来する激しいおっかけっこを展開するSFだと思ってしまう。前半、その煽りにより非常に退屈だと思ってしまう人がいたとしたら、それは凄く不幸な事だ。

ジョンは究極の孤独な人間。
唯一の理解者は自分で、自分自身しか愛せなかった人間なのに、最後にボマーとなった自分を愛せなかったことでメビウスの輪が完成してしまう。なんて悲しいんたろう!

鶏が先か卵が先か。
自分で自分を産むということで自分が存在するという考えは、では最初にその時代に達した時に誰から生まれていたのかという矛盾をはらみ、ゆえに始まりが無いに等しく、現実には有り得ない。
だがこの背徳さが物語に異様な深みを与えている。

未来もなければ過去もない。永遠の輪の中をグルグルグルグルと廻る、ジョンの人生。
まさに矛盾が生んだ存在、誰とも交わることの無い運命。凄く切ない。

最初、この映画はどう展開していくのかと訝しく思いつつも、ジェーンの、数奇な人生に引き込まれていった。
私の頭の中では目まぐるしく推理が展開し、バーテンが爆弾魔で、冒頭で失敗したジョンは何らかの理由で、整形で爆弾魔そっくりにされてしまったのかと考えた。バーのシーンは炎で焼かれる前のジョンが、これから爆弾魔を追い詰める過去を描いているのかと。
なかなかいい線までは推理できたと思うが(笑)、話は私の予想のはるか斜め上を越えていった。

後半は怒濤の展開、目まぐるしい展開にドキドキしっぱなし。
ボマーに顔を焼かれた時のジョンを眺めている「もう1人のジョン」のシーン辺りで、彼の「瞳」を見て真実に気がついてしまってからは、言いようもない哀しみが胸を突き刺した。

この時空のパズルを、二部構成でみせたのは素晴らしい。
全く違う映画を二本見た感覚に襲われた。

タイムトラベルの機器が楽器ケースだったり、タイムトラベルの瞬間の空気が圧縮して膨張するような描き方も最高にクールで、タイプライターと同じ様に哀愁を感じる。
CGに頼らず脚本と見せ方で全く無駄の無い作品に仕上がっている。
私のなかでは久々のSF傑作。
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