So-net無料ブログ作成
検索選択
ヒューマンドラマ ブログトップ
前の10件 | -

ムーンライト [ヒューマンドラマ]

満足度★85点


●HP・・・http://moonlight-movie.jp/


2017-04-28T18:47:40.JPG


■ありのままをさらけ出し、少年の魂は解放される


全編を貫く言いようのない緊張感に、どっと疲れた2時間だった。
暴力を振るわれる恐怖、友人を失う恐怖、自分の中に芽生えた感情をもてあます恐怖、それが露見する恐怖、母親が壊れていく様をなす術も無く見守る恐怖。
主人公はもどかしいほど無言。しかしこれほど沈黙が雄弁に語る映画はあっただろうか。
心の中に言葉はあふれているのに、幾重にも暗いベールに世界を閉ざされ、それを払いのけることができない苦しさがこちらにも伝わり、息が詰まった。

肌を撫でる音、初めて他人に触れさせた夜の波の音、探るような息づかい、夢精した朝。匂いまで感じられるような生々しさに戸惑いながらも、彼の心の震えに共振する。

暴力や貧困、マイノリティーであることに苦しむ中、主人公が秘めてきた想いに一筋の光が差す。
そのとき気づかされた、紛れもない純愛に心が揺さぶられた。

物語を追体験したいと思う映画ではない。
でも、劇場にいる間は確実に、私は彼そのものであるような錯覚に陥っていた。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

別離 [ヒューマンドラマ]

満足度★70点

別離 [Blu-ray]

別離 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: Blu-ray




■嘘の積み重ねで不幸せに

罪を被ること、夫から暴力を受けること、娘を失うこと、様々な「恐れ」から嘘を積み重ねる人々。
嘘がばれることを恐れてふたたび嘘をつき、皆が皆その嘘でがんじがらめになる。

そもそもの原因は一組の夫婦が別れるということから。
二人が歩み寄っていれば、負の連鎖は起きず、回避できることが様々にあった。和解することの難しさと、人間の業よ。

介護をするにあたり異性の裸をみていいのか、裁判で確証がないまま慰謝料をもらっていいのかなど、聖職者にいちいち確認する女性の姿が印象的。
コーランに手を当てて誓うということが、ムスリムのなかでいかに説得力を持つ行為か、ということがよくわかる。
個人的には、神の畏れより人として信頼を失うことを恐れて欲しい。
個人的には主役の男性に同情してしまった。
アルツハイマーの父を置いて外国へ行きたくない気持ちはわかるし、妊娠していたヘルパーの女性を突き飛ばしてしまったことに対して、保身から嘘をついてしまったことも、大きな悪だったとは思えない。
すべての小さな不幸せがドミノ崩しのように彼に収斂したようで、ラストぽつねんと座る姿に胸が痛んだ。
もちろんヘルパーが流産したことは大きな不幸だが、あれは人的被害というより事故だった。

意外とイランでは女性も強い自己主張ができる国なのだなといういう点で驚きはあったが、世界中どこの家族にも起こりえる、普遍的な辛さを描いている映画だった。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

わたしに会うまでの1600キロ [ヒューマンドラマ]

満足度★75点

わたしに会うまでの1600キロ [DVD]

わたしに会うまでの1600キロ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD

■後悔の果てに あるがままを受け入れて

誰しもが必ず直面する家族の死。
死の受け取りかたは千差万別だけど、はっきりいって最初はシェリルに共感できなかった。
優しい旦那がいるにも関わらず、なぜあんなにも自堕落していったのか弱いとしか思えなかった。

しかしローラ・ダーンのおおらかで愛情溢れる演技で、シェリルと私との溝は次第に埋まっていった。母親がいかに彼女の精神的支柱だったのか。

シェリルは母親を愛していたけど、蔑んでもいた。男の見る目がなく、学もなく、貧乏で。
それなのに、毎日幸せそうに家事をする姿にも苛ついて。
双方が愛情の受け渡しを存分にやっていれば、シェリルはあそこまで堕ちなかったのだろう。自責の念で、無意識に自身を傷つけずにはいられなかったのだと思う。

たぶん馬のことも後悔の一つで。
どんなに苦しくても生き絶えるまで生かしてやるべきだった、きっとそう感じてたんじゃないかな。

1600キロ、基本的にずっと一人で、自分自身と対話して歩いてきたシェリルは、やっと最後に母親と同じ視点に立てたんだと思う。あるがまま、今この瞬間を受け入れるってことに。

彼女が歩いた道は、そのまま心の葛藤と成長の時間に比例する。
他のハイカーとは全く別の旅路を生きた彼女を、リース・ウィザースプーンが赤裸々に演じて素晴らしい。
巧みというより、余計なものを削ぎ落とした演技。その表情には余計な雑念はまるでなく、悟りを開いたかのようだった。

下手したらただ歩いて自堕落人生を嘆くだけのつまらない映画になるところを、巧みなフラッシュバックと編集で、佳作に仕上げました。


>>一言メモ

本編とは話が逸れますが、女性一人のハイクが、常にレイプの危険と隣り合わせという、別の側面からも興味深かった。
メキシコ系の男性は優しい人でしたが、途中で出会う男性二人は恐ろしかった。
異常に警戒されたことに腹をたてたのかもしれないけど、あの威圧的な態度で更に警戒心が増すってわからないのかな?
それにしても、レイプ目的でハイクに来たわけでもあるまいし…。
性欲は肉体の疲れで発散されないのだろうか?
私も女性なのでシェリルの怖さは物凄く強く伝わった。

ちなみにやはり途中山小屋で合流した若者3人組の一人が、朝しつこく歌っていたのは「アラニス・モリセット」の曲です。
私も大好きで盤面が汚れるほど聞き込んでいました。
このアルバムは1995年に発売。シェリルがこの経験をした時代背景がわかりますね。


 

ジャグド・リトル・ピル

ジャグド・リトル・ピル

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1995/07/25
  • メディア: CD

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

セッション [ヒューマンドラマ]

満足度★90点


セッション コレクターズ・エディション [Blu-ray]

セッション コレクターズ・エディション [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • メディア: Blu-ray

■二人の男の狂気の果てに…

名門音楽学校に通うニーマン。
友達も少なく恋人もおらず、孤独で一見凡庸そうな青年だが、ドラムの腕を見込まれてカリスマ教授フレッチャーのバンドに参加することになる。
だがそれは、恐るべき試練の日々の始まりだった。

フレッチャーのサディスティックな指導は、しごきと呼ぶには生ぬるい。

まるで真剣を持って対峙しているかのごとく、目をそらすことも後に引くこともできない。フレッチャーが人斬りならば、ニーマンは竹刀しか持ったことのない道場剣。スティックを刀身と見立てるならば、一振りごとに神経を削る命のしのぎ合い。

自分の音も他人の音も漏らさず聞き取り、正しい音を出してもそれに気づかなくては駄目であり、一音でも出す音を間違えば待ってるのは無限地獄。

仏教でいうならば眼睛、ただ己の体そのものが楽器となって音となって忘我の境地にならなければ、フレッチャーは満足しない。

もう、生徒の人間性なんておかまいなしなのである。というか、人間性なんて見てないのである。

この異様な人間関係、見たこともない緊張感と緊迫さは【ブラック・スワン】に似ている。

これは本当にジャズ映画なのか?
私は何を見てるんだろう?
そんな緊張感はラストまで緩まない。

精も根も尽き果て「我」を取り戻したニーマンと、学校以外の場所で出会ったいつもより「人間らしい」フレッチャーとの間に、一種の和解が生じたなどと甘い夢を見ていたら、思いっきり張り手を食らった。

久々に、予測をはるかに越える怒濤の展開だった。

フレッチャーの復讐劇は、ニーマンのお披露目公演と化してしまうのである。

そしてその狂気の果てに才能が開花した瞬間に立ち合えたことに、体の芯が震え、フレッチャーと同じく、わけのわからない悦びさえ感じてしまうのである。

フレッチャーは現実にいたら絶対に関わりたくない人間だが、揺るがない自信を持ち、罪悪感の欠片もなく振りきれている姿勢に、最後ちょっぴり好感さえ抱く自分がいた。
この人を満足させられたら、自分はどうなるのだろう?と、その先を渇望させる何かを与えられる稀有な人。
ニーマンも、彼がいなかっとしたらあそこまで追い込まれなかったら、捨てきれない夢を抱えて場末のバーでスティックをふるう凡庸な人生を送っていただろう。

漫画原作の安っぽいドラマに浸りきったお花畑の高校生などに、これを見ろ!と突きつけたくなる。
とにかくこういう映画が、一種の映画愛好家だけのものとならず、広く一般的に見てもらえるようになってほしい。
 

ブラック・スワン [Blu-ray]

ブラック・スワン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

スポットライト [ヒューマンドラマ]

★満足度80点

spotlight.jpg

■等身大のヒーロー

記者たちの地味な作業に呼応するように、物語も淡々と進む。
彼らを過大評価することも、取り立ててヒーローに仕立てていないことに、好感が持てる。

スポットライトは、四人編成のチーム。
そもそも聖職者の性犯罪を追う事になったのは、新任局長から「別の枠で取り上げているコラムをこのままに終わらすのは惜しい」との意見があったからで、この人の鋭い着眼点による功績が大きい。
しかし、調べるにつれ、驚愕の事実が明るみになる。
教会がもみ消した聖職者の性犯罪率が、予想を遥かに超えて多かったのだ。
聖職者自体の数が、一地域に対して多いことが数字を押し上げているのこともあると思う。

その数字に辿り着くまでの地道な地道な作業。教会関係者の名簿に休暇や移動が含まれていたら、それは犯罪を犯した合図と推測し、頁を繰りつつ拾っていく。
それが長年聖職者の犯罪を心理学的要素から追ってきた研究者の推測されるデータと見事一致。
そんな物的証拠とも言えない手がかりを頼りに、孤軍奮闘している弁護士や、被害者の会の助けを得て、被害者への取材にこぎつき数年がかりで調べあげていく。

聖職者による未成年への性犯罪は、宗教や地域や親への不信を植え付け、大人になってからも家族に言えない恥辱と、永遠に消えない怒りに悩まされる。元からゲイを自覚している少年であってもなくても、それは変わらない。

新聞記者から教会への糾弾は、地域の名誉を傷つけるとともにつながりを断つことにもなるため、もみ消した弁護士や教会関係者から圧力を受ける。しかし命を狙われるとか、派手でドラマティックなことは起きない。
だが、文字通り生活や人生をかけて、罵詈雑言や拒絶に立ち向かう彼らの姿は、静かに静かに胸を打つ。
信念をかけられる仕事に出会える人はどれだけいるだろう。

取材対象者の家の裏に、さりげなく教会が建っている。いかに教会が地域に密着しているかがよくわかる。新任局長はユダヤ人で、彼は第三者の目で、カトリック教会の闇に気がついた。そういった人種や宗教が多様なアメリカの複雑な社会構造も言葉の端々にあらわれ勉強になる。

後半、数年前に被害者の会からボストングローブに送られた資料が局内で雲散霧消していたことが発覚。故意ではないとはいえ、それは着任間もなかった現スポットライト編集長の責任によるところだと判明。
皆が言葉を失うなか、彼にかける局長の言葉が印象的だった。
「私たちは暗闇のなかを歩いていて、正しい道はわからない。ある日突然に光が指して自分の歩く道がわかる」と。

これはどんな仕事にもいえる。例えば原発などもそうだけど、事故が起こってからとんでもない過ちをおかしたことに気がつく。それは経営者、科学者、受け入れた原発村、安全神話を鵜呑みにした社会、なにも考えず惰性で生活してきたすべての人間に当てはまる。
常に考え疑問を投じ、自分で調べること。それがいかに大事かを改めて教えてくれた、教科書のような話だった。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

ルーム [ヒューマンドラマ]

★満足度80点

■「世界」の新鮮さを体験する

room.png

唸った。 とにかく唸る。
脚本に、母親役のブリー・ラーソンに、 そしてジャックを演じたジェイコブに。

生まれたときから狭い納
屋の世界しか知らないジャック。 そこから脱出したとき、誰もがほっとして、これで問題は解決したと思う。
でもそうじゃない、空さえ見たことのなかったジャックにのしかかってきた「世界」は、私たちの想像を越えてはるかに広大で、目まぐるしかった。

本当に辛いのは、監禁後なのだと思い知らされる。「HAPPYなはずなのに」失った時間が 徐々にジョイにのしかかり蝕んでいく。 普通に振舞って子供らしくして欲しいの に、ジャックは部屋にいたときと同じように、ずっと私のそばにいる――。
世界は広い、もっともっと好奇心をもって欲しい、やっと出れたのだから、私を束縛しないで欲しい! ジョイのもがき苦しむ姿に、監禁されていた年月の重さを知る。

でもちゃんと子供はわかってるんだよね。少しずつ、彼のペースで心の扉を開いていく。 急がないで、ママもゆっくり歩いて?というように、至極マイペースに。その証拠に、部屋を見て彼は「縮んだの?」という。
世界の広さに、徐々に馴染んできた証拠に。

そしてさよならを言う。 彼にとっては、大好きな母親と一緒で、 もしかしたら幸せだったのかもしれない場所に。
幸せ、不幸という概念もなく過ごしていた時間に。

ジャックが部屋に行きたいと言ったときはぎょっとしたけど、子供の方が幸せの本質をちゃんとわかっているのかもしれないと思った。
彼に背中を押されるように、過去に決別し、やっと心の自由への一歩を踏み出すジョイの姿に熱いものが込み上げた。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

アイ・アム・サム [ヒューマンドラマ]

満足度★75点

I am Sam アイ・アム・サム [DVD]

I am Sam アイ・アム・サム [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


■子供の気持ちをもっと尊重してあげて

同じような境遇の人で、サムのように幸運な状況に置かれるのは、あり得ないことだとは思う。
友達(障害者仲間)もいて、大手企業の福祉事業の一環だとしても一応の職もあり、彼のことをよく知るレストランの店員や周囲の温かい目もあり、手助けしてくれる温厚な隣人もいる。

それを夢物語だと批判するのは、あまりに夢がない。
児童福祉局が積極介入してくるアメリカにおいて、児童が守られる可能性は日本よりは高いのだとは思う。
ただ、あれだけ心通わせている二人を引き離すのはいかがなものか。情緒不安定な人間が二人生まれてしまうだけ。
劇中でもアニーが懸念していたように、「子供は親のIQなど気にしない」
子供に必要なのは、側にいて抱き締めて、絶対的に自分の味方でいてくれる存在。

お金は有り余っているけれど自分のことで手一杯で子供にかまってあげられない弁護士親子の姿と、サム親子の姿は、そのことを実にわかりやすく対照的に描いている。

ケースワーカーが定期的に様子を見に来て、ルーシーが「もう父が手に負えない」と悩み始めたとき初めて、距離を離させるということができないのだろうか。サムに暴力性が垣間見られないのなら、問題はなさそうだが。

というように、「是か非か」しかないあまりに子供の気持ちを無視した対策に、疑問を感じた。
子供は正しい判断ができない?そりゃそうだ、子供なんだもん。
でも感情がないわけじゃない。大好きな人と離されることほど、苦痛なものはないよ。

映画で提示されているように地域・隣人ぐるみで見守るのが最高の理想形なのだろう。
里親候補だったランディも、最後は「あなたの隣に席をとっておいて」と言ったので、無事にサムはルーシーと暮らすことができ、ランディ夫婦は今後も二人のよき友人となるのだろう。

人間が増えれば増えるほど地域の関係が希薄になっていく世の中だからこそ、サムやサムの仲間の純粋な労りの言葉が胸に沁みる。
言いたいことがうまく言えないもどかしさが、心に宿る感情のくすぶりを伝えるようで…【クレイマー、クレイマー】を引用する下りも泣けました。

ビートルズの名曲が切なくも爽やかな後味を残してくれました。
親子の話なのに、青春映画をみた気分です。
もしかしたら、描かれたのは二人の一番幸せな日々だったのかもしれないから。

I Am Sam

I Am Sam

  • アーティスト: John Powell
  • 出版社/メーカー: V2 North America
  • 発売日: 2002/01/08
  • メディア: CD

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

6才のボクが、大人になるまで [ヒューマンドラマ]

★満足度75点

■誰にでも等しく時は流れる

特筆すべきいかにも「映画的」なことは起こらない。
それなのに、まるで自分の人生のことかのようにのめり込んでいる。
原題はボーイフッド(少年時代)なのだが、多分40代以降の世代の方が、グッとくるものがあるのでないだろうか。
劇中、メイソンの成長とともに「青春あるある」のオンパレードになるのだが、それよりも「(人生が)短すぎる」という母親のオリヴィア(パトリシア・アークエット)の振り絞るセリフが、最後に胸にズシンと響く。

孫に銃をプレゼントしたり高校卒業を祝うパーティを開いたりと、アメリカと日本では文化が違うところも多々あるが、メイソンの一家が織り成す生活は国を問わず普遍的なものばかりだ。

個人的に親が三回離婚しているので、メイソンやサマンサにすごく共感した。
自分ではどうしようもない環境の変化に「すごくムカつく」と叫ぶしかない子供の無力さ(笑)。

メイソンは初めから繊細な感受性を持っていて、そのイノセントさを12年も表現し続けたコルトレーンは凄い。
一歩引いた目で家族を、社会を見つめ続け、でも決して誰を責めるわけでもない優しい男の子。
悟ったような口ぶりもするが、その実自分の世界に入り込むことで安心感を得ている多感な状態を、自然に演じていた。

成長するのは子供だけではない。
いつまでたっても子供のような夢を見ながら現実をごまかす実父のメイソンsr(イーサン・ホーク)に、共感する人も多いのではないだろうか。
社会と折りあいをつけるのは、いつも女の方が早い(笑)。

そんなイーサン・ホークの役どころはダメンズ一歩手前だったけど、傲慢な養父との生活で無口になった子供たちに「会話ってのはこういうもんだ」と正面から向き合った姿は良かったなぁ。
個人的には彼も助演男優賞もらってもいいと思ったよ。

160分は映画としてはとても長いのに、描かれていない部分をもっと見たい!という物足りなさも。
特にオリヴィア。デートシーンはないので、彼女がどうしてダメンズばかり捕まえてしまうのか気になった(笑)
他にメイソンがラブラブだった彼女との破局までの道のりとか…
振り返れば最初は順調だった恋って、いつ歯車が狂ったのか不思議に思うことって、多いよねぇ…。

どんな人生を送っていても、誰にでも等しく時は流れる。
人生って滑稽で思い通りにいかなくて、いつも物足りなくて。
きっとほとんどの人は自分の人生に満足してない。
そんな平凡な大多数の人間への愛情あふれる映画。
時間を共有しながら半生を追体験し、せつなくなりました。


〉〉映画メモ


ひとつだけ気になることが。
大学へ進むメイソンに、先生がひとしきりエールを送ったあとに「毎日フロスもしっかりかけてね」というのです。
これって、メイソンの息が臭いことをさりげなく注意してたのかな?それが失恋の1つの要因だったりして(笑)
家庭が複雑な子供は不衛生になる傾向にあるので、もしかしてそういう意図が…?考えすぎ?
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

幸せへのキセキ [ヒューマンドラマ]

★満足度70点

幸せへのキセキ [Blu-ray]

幸せへのキセキ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray

■ある動物園をめぐる奇跡と軌跡

実話に脚色を加えたハートフルな映画
妻を亡くした悲しみから立ち直れない男が失業し、同じように悲しみから心を閉ざしている長男と、明るくムードメーカーな幼い娘をつれて心機一転引っ越しを決意。
心惹かれた物件は、実はオーナーがいなくなった動物園で――。というお話。

衝動的に動物園を買ったベンジャミンが、素人のオーナーとして動物をどう扱っていくかという運営ノウハウよりも、ベンジャミンが妻の死をどう受け入れ、乗り越えていくかという心のドラマの動きに焦点が当てられている。

マット・ディモンが等身大の男を、こってりでもなくあっさりでもなくまさに丁度いい自然体の演技で魅了する。
開園準備へ四苦八苦しながらも、時間が空くと妻のことばかり考える。
悲しみを忘れるため勝手に奮闘する父との溝を感じ、孤独感を強めていた長男ディランとの情感のこもった口論の場面は思わず落涙。

キャメロン・クロウ監督の作品はどこか青春の刹那的な雰囲気が漂って好きだ。
陽の光、芝生に遊ぶ動物の美しさ、雨が葉にしたり落ちる様子がきらきらして。
小さな動物園という世界を守る小さな喜びというか。
動物たちを眺めているあいだの小さな幸せというか。
初めて動物園に訪れたベンジャミンの感動が、手に取るように観客の心にシンクロする。

この映画が平凡にならないのは、ベンジャミンとケリーが簡単に恋に落ちず、最後までベンと亡き妻の心の絆を大切に扱っているところ。
辛くて行けなかった思い出のレストランで、子ども達の前で「出会ったとき」を再現するシーン。
ラストで初めて、ロージーがしきりにせがんでいた「お話」がなんなのか、ベンが困ったときに口にする「それじゃいけない?」という台詞が、亡き妻と関係していたことがわかる。
特に謎としてもったいぶっていなかっただけに、サラリと明かされるこの演出にはぐっときた。

他の登場人物もやり過ぎないほどユニークなのもいい。
したり顔で抜き打ち検査に来る天敵「フェリス検査官」の不思議な手の動き(これは後にケリーとベンの内輪ネタに)。
後先考えず余計なことばかり言うベンの兄。
飼育員たちがなぜか全員70年代ぽかったりとか(監督の趣味かも)。

この映画は、【あの頃ペニー・レインと】とに通じる爽やかさがあった。
一般人が動物園を買うといういかにも映画的な荒唐無稽なお話を、てらいのない瑞々しさで描ききった。

あの頃ペニー・レインと [Blu-ray]

あの頃ペニー・レインと [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
  • メディア: Blu-ray

〉〉俳優メモ

息子を演じたコリン・フォードくん。美少年っぷりを発揮してますが、ドラマ【アンダー・ザ・ドーム】では、手足がギュンギュン伸びてすっかり成長した姿に。キスシーンもかましますが、細すぎてちょっと心配。

【Amazon.co.jp限定】アンダー・ザ・ドーム スペシャルDVD-BOX

【Amazon.co.jp限定】アンダー・ザ・ドーム スペシャルDVD-BOX

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

私を離さないで [ヒューマンドラマ]

★満足度90点

わたしを離さないで [Blu-ray]

わたしを離さないで [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray


原作を一年前に読んで…すぐに映画を観たら涙腺が崩壊するんじゃないかと思って、録画したまま寝かせておきました。

再びカズオ・イシグロの世界に入り込んで…空気感が立ち上ってくるような気がしました。
原作の行間が見事に表現されています。

原作のレビューはこちらでも書いたので、内容の多くには言及しません。
陳腐な言葉でレビューを書いて本作の魅力を損なわせてしまうのが恐いくらい、繊細で美しくて切ない作品です。

本当に映像が美しく、どこを切り取っても寂寥とした物悲しさが漂ってきます。
古い修道院のようなヘールシャム、桟橋のある海岸、打ち上げられた廃船。胸を締め付けます。

映像化された作品をみても、この作品の「未来を描いたSF」とならないように配慮された時代設定が秀逸だと思う。
自分のクローンを育てて臓器移植することが、当たり前すぎて誰もおかしいと思わない社会。
クローンたちは子供のうちから臓器提供のための存在だと知らされ、「(臓器)提供」「終了(死)」という言葉が日常的に使われる。 生きるスキルも教えられず、戸籍ももたず。
匿ってくれる頼れる存在もいない。

クローンだからといって、機械で管理されているようなシステマティックな描写は一切なく、辛うじてあるのは腕につけたIDのようなものだけ。それも特に説明はありません。
描かれるのは、短い人生でも普通に恋をし、叶わないと知りつつ将来を夢想する、通常の人間となんらかわらない人間模様。
一般的なSF的要素はひそみ、人物描写に焦点をあてているので、ジャンルはヒューマンドラマにしました。

しかし彼らを取り巻く社会のヒントは非常に上手く散らされてあり、最期まで謎の存在「マダム」がキーポイントになっていました。
トミーとキャシーがマダムに会いに行くシーンでは、「猶予」がないことや、マダムと校長の関係が明かされ、それにより冒頭の校長の演説で、ヘールシャムが糾弾されていたのは、クローン推進派からだったことがわかる(はっきりとは言っていないが)。
そしてそのことがヘールシャムが「特別」だと噂される根拠になったのだ。
そしていまやそのヘールシャムはなくなり、代わりにできた施設では「まるでブロイラーのように」扱われている、というトミーの仕入れた情報から、結局クローンを取り巻く世の中はもっと悪くなったことが裏付けられる。

他のレビューで、クローンが従順な事に「荒唐無稽」と評している方もいましたが、【アイランド】のように壮大な逃亡劇やレジスタンス運動に身を投じて、主人公が晴れてハッピーエンドとなる展開の方が荒唐無稽ではないでしょうか。
大衆の総意というものが、善悪の判断を鈍らせ疑問を抱かせない社会になっていく方が、非常にありそうで怖い。

特にクローンがつける職が同じクローンの「介護」職だけというのが残酷きわまりない。
直視したくない問題は、彼らにやらせておけという、卑怯。

終始達観した表情を湛えていたキャシーの最後の独白と涙に込められた思い。
怒り、絶望、達観、郷愁、愛情、色々な思いがない交ぜになった、非常に深く苦しい場面でした。

臓器のために自分を複製するというのは、他人の死を待って臓器を望むよりも、抵抗は少ないのかもしれない。
元は自分なのだから、分裂した細胞程度にしか思ってないのではないか。
今は万能細胞により部品ごとの複製が可能な未来が期待されるが、一歩間違えれば同じ未来が待っていたかもしれない。
人の残酷な面と、短い人生を正直に生きる純粋な面と、極端を同時に描ききった傑作だと思う。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画
前の10件 | - ヒューマンドラマ ブログトップ