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グレイテスト・ショーマン [ヒューマンドラマ]

満足度★90点

■リンゴの場面で傑作の予感がした

告白するとバーナム少年に差し出された林檎の場面で既に、一気に涙のコップが満杯になって溢れそうになってしまった。
表面張力で辛うじて保っていた涙は、何度かのピークを経て「ディス・イズ・ミー」で一気に決壊。
人の悪意ある視線は凶器になる。それをはねのけ、恥じることはないと前に進む勇気に感動した。

いじめじゃないにしろ、大勢の前で恥をかかされたことのある人はわかると思う。恥ずかしさとやるせなさの上に降りかかる、憐れみ。憐れみは善意のようでいて、人を卑下させる。自分が矮小で無価値なものになった気持ちにさせられる。
対等に扱うことが差別ではないことだと思うのだが、人間である限り、完全に心の中の差別を無くすのは難しい。 でも、差別が大手を振って正義面すると、暴力が正当化され暴走してしまう。
偽善的であろうと、皆が差別を露わにするのは恥だと思う倫理観を持つ努力はしなくてはいけない。
誰だっていつか、マイノリティーの立場に立たされる日がやってくるかもしれないのだから。

話は王道中の王道。 貧しい男が成功を夢見て、成功を手にした後に自分を過信しすぎて破滅。そしてなぜ成功を手に入れたかったのか、という原点に立ち返る。
わかりやすい物語を、補って余りある音楽の素晴らしさ。
編集も素晴らしく、流れるようにどんどん話が進んでいく。特に前半部分のバーナム少年とチャリティ少女の話の運び方は見事だった。(チャリティとバーナムを繋いだ思いを表すためのガラスが、バーナムとリンドで使われたときは淋しかった!)

フェイクと揶揄された面々が、本物のタレントに出会ったとき。 その輝きに気圧されながらも、私たちにも私たちなりの生きる場所で輝く権利はあると歌い上げた「ディス・イズ・ミー」。
誰しもがメインストリートで生きられる訳じゃない。メインストリートじゃなくても幸せになっていいんじゃないの、と。 歴史上の見せ物小屋こそ差別の象徴だとか、バーナムを善人に仕立て上げたことへの違和感や批判もあると思う。 しかし史実のバーナムは取りあえず脇に置き、今この真っ直ぐなメッセージを素直に受け取り、歌の持つパワーに身を委ねたいと思った。

ほんの少し物足りなかったことと言えば、せっかく口説き雇ったカーライルの才能を示す描写が無かったこと。白人と黒人カップルが受ける偏見を表すための役割だったのだとは思うが、彼の力でサーカスがブラッシュアップされていく風景を見たかった。そこまで求めるのは、欲張りだろうか。

〈鑑賞後の楽しみ〉
・ミッドタウン日比谷…https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/jp/

3/29に開業してすぐでしたので、まあまあ人は多かった。特に上にあがるエスカレーターへの誘導が非常に悪く、人が並んでいないのに蛇腹にロープが張られており、延々と歩かされてしまった。
鑑賞後ふらふら。3階は日比谷セントラルマーケットが面白い。小売店やアパレルと飲食店が壁で仕切られていないオープンスペースのようになっていて、面白い物がいっぱい詰まってる市場の雑然とした雰囲気を表現しているそう。でも、食べ物と化粧品の匂いが混じってしまうことも…。
立ち飲み【三分】は、銀座界隈にあったときに何度かお世話になりました。この日は客がいっぱいだったので又今度。リーズナブルな地下一階へ。

▼Susan's MEAT BALL(HIBIYA FOOD HALL)(スーザンズ ミートボール)
ボックスかパンかを選びます。ボックスだと必然的にライスになります。肉は牛・豚・鷄、もしくはビーガンから選べます。ソースも4種類から選べます。マッシュルーム、チリコンカン、バジル、あとは何だったかな…
ビールはカールスバーグの瓶のみ。客も店員もモタモタ。
とにかく!ミートボールは直径4センチ大ほどあり、食べ応えはあります。
そして友人の頼んだ鶏肉を食べましたが、断然牛の方がうまい!

このフロア、ほぼ全店ファストフードか軽食風なのに、23:00にフロア閉鎖で22:00ラストオーダーとちょい早め。キャッシュ&デリバリーなんだから、ラストオーダーは30分前でよくないか?
そしてフードコートと思いきや、実は他店の椅子とテーブルははっきり分けているという曖昧ぶり(よく見ると椅子とテーブルのデザインが違う)。
空いてるからあそこ座ろう♪とトレーを持って移動すると注意されるかもしれません。

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シェイプ・オブ・ウォーター [ヒューマンドラマ]

満足度★85点

■名前もいらない「あるがまま」の存在


デルトロ監督の映画には、湿り気というものがある。

パンズ・ラビリンスにも、ミミックにも、そしてこのシェイプ・オブ・ウォーターも。
イライザの肌、バスタブに注がれるお湯、かき混ぜる指、茹で卵の煮沸している水、さらに踏み込んで自慰にふけたり性交するときの分泌液まで想起させる。
そういった生々しさを生理的に嫌悪する人もいるかもしれない。
でも私は、純愛ものでボカしがちな女性の性欲を生々しく描くことで、ある意味男性と対等な存在に引き上げた監督に敬意を抱いた。

また、何となく健常者が身体障害者に対して抱くイメージが「聖者のようにクリーン」であることが多いように思う。 パラリンピックなどのイメージがあるためだろうか。彼らの純粋な部分ばかりが前面に押し出されてしまい、性欲など超越しているかのような、はた迷惑な固定概念の押し付けをしている気がするのである(乙武さんの不倫騒動があったとき、世間が過剰に反応したのはそういう理由かも)

冒頭でイライザが自慰にふける場面をいれることで、それらの固定概念やステレオタイプのイメージをぶっ壊し、「あるがまま」の女性を描いたことは特筆すべきだろう。

そして特筆すべきことはまだある。 イライザが半魚人に抱く気持ちを、とうとうと手話で説く胸を打つシーンがある。 彼女はあるがままを見てくれる彼が、かけがえのない存在だと訴える。

お気づきだろうか。イライザは、彼に名前を付けないのである。
名前をつけるということは相手を自分のイメージに縛りつけることでもあり、何者であるかを制限することでもある。そして、あなたは私のモノだと宣言することでもある。

でもイライザは彼に名前を付けないのである。二人の関係には「私とあなた」しかなく、二人はまさしくどのコミュニティにも属していない「あるがまま」の存在なのである。これ以上の純粋な関係はあるだろうか。

この映画には偏見と差別が渦巻いている。時代設定上しょうがないというより、デルトロはあえてそれを訴えたくて、この時代を選んだ気もする。 イライザを取り巻く親しい人々はみなマイノリティ。隣人ジャイルズはダイナーの若者に恋をする初老のゲイで、ふられた挙げ句相手は生粋の差別主義者であったし、友人ゼルダは黒人であることで会社で差別発言を受け、更に家庭での寂しさから職場では逆に旦那の話しばかりしている。
しかし二人はイライザに対して痛々しいほど誠実であろうとするし、真摯的である。

対して、ゲスの極み、ストリックランドという男の存在。 妻との性交のときに口を押さえる仕草は、弱き者の意見を塞ぐという独裁者への皮肉なのだろうか。
イライザらがせっかく掃除したばかりのトイレで小便を撒き散らし、手を二回洗うのは軟弱な男という持論を振りかざし、出世欲に取り憑かれ、独りよがりでマゾ。本当にゲスい。
人間性という点では、マイノリティ側の方がよほど優れている。人種や偏見に捕らわれず、あるがままを見よう、というメッセージかここでも込められている気がする。

最後、ストリックランドが引き裂かれた喉は、失われた声のイライザの傷み。そしてイライザの傷は「彼」の力で生きるすべとなる。彼女の傷はこのためにあったのかと、みごとな布石にため息がでた。
傷つけられた人々はそれを糧にして、立ち上がる強さを持っているぞ、というデルトロ流の人間賛歌なのかもしれない。

卵や緑などの隠喩、米ソ冷戦とミュージカル黄金期の光と影、デルトロ監督が敬愛する怪物映画へのオマージュ、様々な要素で成り立つ多重構造。 そして、クリーチャーと人間との純愛というリスキーな物語を、こんなにも上品かつ生命力溢れる映画に仕立てた手腕に脱帽。本当に稀有な映画だと思う。

余談だが、最期のジャイルズの独白で語られる「姿は見えなくてもあなたの気配がする」という詩は、イライザという親友が去ってしまった淋しさを埋めるため自分に言い聞かせているのかな、と思ったら、ふいに涙が出ました。

>>映画前後のお楽しみ

日比谷公園で花見と【オイレンブルク遠征隊】の史料を閲覧して、シャンテの映画半券割引で栗原はるみプロデュースのカフェ【ゆとりの空間】へ行きました。

なんてことはないメニューですが、安定した美味しさ。バニラアイスが半券の特典でした♪ アイスの味が一番忘れらない!

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偉大なるマルグリット [ヒューマンドラマ]

満足度★75点


■好きだから歌うんだ

夫の疑問、「なぜ彼女は歌うんだ?」のシンプルな答え。

上手いから歌うのではなく、好きだから歌うんですよね。


ありのままをさらけ出す天真爛漫で純粋なマルグリット。

好きなものは好き!と歌う喜びに溢れた彼女の目の輝きを前にしたら、好きにならずにいられなくなる。

一度は騙された若き芸術家たちへの寛容な振るまいも素敵。自分が好きな人や物に惜しみ無く投資する姿も清々しい。


自分が一番大事にしているものを、なぜ夫は認めてくれないのか。

自身の音痴に気づかない彼女はずっと心を痛めている。毎度歌う前に夫を探す姿が切ない。


終盤、劇場でリサイタルを敢行したマルグリット。

序盤では音痴を盛大に披露し失笑を買うが、特訓の成果もあってか徐々に音程があってくる。…まさか?もしや?

期待に胸を膨らませたところで、まさかの展開。


すっきりとハッピーエンドにせず、髭女の台詞「物事には光と影」のように、悲劇と幸福の二重構造で畳み掛ける。

マルグリットの軽い精神崩壊とともに、それまでの世界が暗転。

黒人執事はずっと味方とばかり思っていたのに、彼女を面白い被写体として利用していただけだった。


しかしマルグリットが切に望んでいたもの、夫の献身や情愛は彼女を包み込んだ。
真実を受けとめて、もう一度彼女が目覚めることを切に願うばかり。


ともあれマルグリットからは、評判や周囲の声にとらわれない、心の自由と解放のあるべき姿を教えられた気がしました。

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Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 [ヒューマンドラマ]

満足度★60点



Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 [Blu-ray]

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • メディア: Blu-ray




■謎解きではなく、ホームズの懺悔話


少年と一緒に事件を解決するというよりも、彼との交流を通してもう一度自分自身を見つめ直すというお話。
推理を惑わすものとして、一切の感情を否定してきたホームズが、時に真実を暴くことが人の助けになるわけではないのだと、90歳を越してようやっと気がつく。


ソウルメイトとして孤独を分かち合うことができた女性を、むざむざ死なせてしまったことへの後悔の念。


それを認めたくない頑なな心が、次第に記憶から事実を消し去ってしまって、自分がなぜ思い出したくないのかさえ、忘れてしまったようだった。老いとはこういうものかと、切なさを感じる。


イアン・マッケランは哀愁と傲慢さを絶妙なバランスで演じる。

父に何を言ったのかと詰問する日本人、梅崎役の真田広之も良かった。


だが、もう少し深い謎が散りばめられているのではと、期待してしまった自分がいた。

ロジャーが刺されたのはスズメ蜂だとすぐわかったし、梅崎の父親の話は謎でも何でもなかった。

蜂と山椒の話がくどいし、第二次世界大戦後の広島の場面はもうファンタジー。
あそこはボケたホームズの夢の日本だということにしたい。

原作を知らないと、私のように純粋な謎解きものだと勘違いする人が多そうです。

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ムーンライト [ヒューマンドラマ]

満足度★85点


●HP・・・http://moonlight-movie.jp/


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■少年の魂は解放される


全編を貫く言いようのない緊張感に、どっと疲れた2時間だった。
暴力を振るわれる恐怖、友人を失う恐怖、自分の中に芽生えた感情をもてあます恐怖、それが露見する恐怖、母親が壊れていく様をなす術も無く見守る恐怖。
主人公はもどかしいほど無言。しかしこれほど沈黙が雄弁に語る映画はあっただろうか。
心の中に言葉はあふれているのに、幾重にも暗いベールに世界を閉ざされ、それを払いのけることができない苦しさがこちらにも伝わり、息が詰まった。
 
肌を撫でる音、初めて他人と触れあった夜の波の音、探るような息づかい、夢精した朝。匂いまで感じられるような生々しさに戸惑いながらも、彼の心の震えに共振する。
 
暴力や貧困、マイノリティーであることに苦しむ中、主人公が秘めてきた想いに一筋の光が差す。
そのとき気づかされた、紛れもない純愛に心が揺さぶられた。
 
物語を追体験したいと思う映画ではない。
でも、劇場にいる間は確実に、私は彼そのものであるような錯覚に陥っていた。

別離 [ヒューマンドラマ]

満足度★70点

別離 [Blu-ray]

別離 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: Blu-ray

■嘘の積み重ねで不幸せに

罪を被ること、夫から暴力を受けること、娘を失うこと、様々な「恐れ」から嘘を積み重ねる人々。
嘘がばれることを恐れて再び嘘をつき、皆が皆その嘘でがんじがらめになる。

そもそもの原因は一組の夫婦が別れるということから。
二人が歩み寄っていれば、負の連鎖は起きず、回避できることが様々にあった。
和解することの難しさと、人間の業よ。

介護をするにあたり異性の裸をみていいのか、裁判で確証がないまま慰謝料をもらっていいのかなど、聖職者にいちいち確認する女性の姿が印象的。
コーランに手を当てて誓うということが、ムスリムのなかでいかに説得力を持つ行為か、ということがよくわかる。
個人的には、神の畏れより人として信頼を失うことを恐れて欲しい。
個人的には主役の男性に同情してしまった。
アルツハイマーの父を置いて外国へ行きたくない気持ちはわかるし、妊娠していたヘルパーの女性を突き飛ばしてしまったことに対して、保身から嘘をついてしまったことも大きな悪だったとは思えない。
すべての小さな不幸せがドミノ崩しのように彼に収斂したようで、ラストぽつねんと座る姿に胸が痛んだ。
もちろんヘルパーが流産したことは大きな不幸だが、あれは人的被害というより事故だった。

イランは意外と女性も強い自己主張ができる国なのだな、という点で驚きはあったが、世界中どこの家族にも起こりえる、普遍的な辛さを描いている映画だった。


わたしに会うまでの1600キロ [ヒューマンドラマ]

満足度★75点

わたしに会うまでの1600キロ [DVD]

わたしに会うまでの1600キロ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD

■後悔の果てに あるがままを受け入れて

誰しもが必ず直面する家族の死。
死の受け取りかたは千差万別だけど、はっきりいって最初はシェリルに共感できなかった。
優しい旦那がいるにも関わらず、なぜあんなにも自堕落していったのか、心が弱いとしか思えなかった。

しかしローラ・ダーンのおおらかで愛情溢れる演技で、その違和感は次第に埋まっていった。

シェリルは母親を愛していたけど、蔑んでもいた。男の見る目がなく、学もなく、貧乏で。
それなのに、毎日幸せそうに家事をする姿にも苛ついて。
双方が愛情の受け渡しを存分にやっていれば、シェリルはあそこまで堕ちなかったのだろう。
自責の念で、無意識に自身を傷つけずにはいられなかったのだろう。


たぶん馬のことも後悔の一つで。
どんなに苦しくても生き絶えるまで生かしてやるべきだった、きっとそう感じてたんじゃないかな。

1600キロ、基本的にずっと一人で、自分自身と対話して歩いてきたシェリルは、やっと最後に母親と同じ視点に立てたんだと思う。あるがまま、今この瞬間を受け入れるってことに。

彼女が歩いた道は、そのまま心の葛藤と成長の時間に比例する。
他のハイカーとは全く別の旅路を生きた彼女を、リース・ウィザースプーンが赤裸々に演じて素晴らしい。
巧みというより、余計なものを削ぎ落とした演技。
下手したらただ歩いて自堕落人生を嘆くだけのつまらない映画になるところを、巧みなフラッシュバックと編集で、佳作に仕上げました。

>>一言メモ

本編とは話が逸れますが、女性一人のハイクが、常にレイプの危険と隣り合わせという、別の側面からも興味深かった。
メキシコ系の男性は優しい人でしたが、途中で出会う男性二人は恐ろしかった。
異常に警戒されたことに腹をたてたのかもしれないけど、あの威圧的な態度で更に警戒心が増すってわからないのかな?それにしても、レイプ目的でハイクに来たわけでもあるまいし…。
性欲は肉体の疲れで発散されないのだろうか?
私も女性なのでシェリルの怖さは物凄く強く伝わった。

ちなみにやはり途中山小屋で合流した若者3人組の一人が、朝しつこく歌っていたのは「アラニス・モリセット」の曲です。
私も大好きで盤面が汚れるほど聞き込んでいました。
このアルバムは1995年に発売。シェリルがこの経験をした時代背景がわかりますね。 

ジャグド・リトル・ピル

ジャグド・リトル・ピル

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1995/07/25
  • メディア: CD

セッション [ヒューマンドラマ]

満足度★90点


セッション コレクターズ・エディション [Blu-ray]

セッション コレクターズ・エディション [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • メディア: Blu-ray

■二人の男の狂気の果てに…

名門音楽学校に通うニーマン。 友達も少なく恋人もおらず、孤独で一見凡庸そうな青年だが、ドラムの腕を見込まれてカリスマ教授フレッチャーのバンドに参加することになる。 だがそれは、恐るべき試練の日々の始まりだった。

フレッチャーのサディスティックな指導 は、しごきと呼ぶには生ぬるい。

まるで刀を持って対峙しているかのごとく、目をそらすことも後に引くこともできな い。フレッチャーが人斬りならば、ニーマンは竹刀で戦う道場剣。スティックを刀身と見立てるならば、一振りごとに神経を削る命のしのぎ合い。
一音でも間違えば待ってるのは無限地獄。

仏教でいうならば眼睛、ただ己の体そのものが音となって忘我の境地にならなければ、フレッチャーは満足しない。
もう、生徒の人間性なんておかまいなしなのである。というか、人間性なんて見てないのである。
この異様な人間関係、見たこともない緊張感と緊迫さは【ブラック・スワン】に似ている。

これは本当にジャズ映画なのか?
私はなにを見てるのだろう?
そんな緊張感はラストまで緩まない。


精も根も尽き果て「我」を取り戻したニーマンと、学校以外の場所で出会ったいつもより 「人間らしい」フレッチャーとの間に、一種の和解が生じたなどと甘い夢を見ていたら、思いっきり張り手を食らった。

久々に、予測をはるかに越える怒濤の展開 。
フレッチャーの復讐劇は、ニーマンのお披露目公演と化してしまうのである。
そしてその狂気の果ての瞬間に立ち合えたことに、こちらも体の芯が震え、フレッチャーと同じく、わけのわからない悦びさえ感じてしまうのである。
ニーマンがフレッチャーと出会ってなかったら、捨てきれない夢を抱えて場末のバーでスティックをふるう凡庸な人生を送っていただろう。

漫画原作の安っぽいドラマに浸りきったお花畑の高校生などに、これを見ろ!と突きつけたくなる。 とにかくこういう映画が、一種の映画愛好家の嗜好品とカテゴライズされてしまうのは勿体無い。いや、ほんと、凄い映画でした。

 

ブラック・スワン [Blu-ray]

ブラック・スワン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray

スポットライト [ヒューマンドラマ]

★満足度80点


スポットライト 世紀のスクープ[Blu-ray]

スポットライト 世紀のスクープ[Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: VAP,INC(VAP)(D)
  • メディア: Blu-ray


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■等身大のヒーロー

記者たちの地味な作業に呼応するように、物語も淡々と進む。 彼らを過大評価することも、取り立ててヒーローに仕立て上げていないことにも、好感が持て る。

スポットライトは、四人編成のチーム。 そもそも聖職者の性犯罪を追う事になったのは、新任局長から「別の枠で取り上げているコラムをこのままに終わらすのは惜しい」との意見があったからで、この人の鋭い着眼点による功績が大きい。

そして調べるにつれ、驚愕の事実が明るみになる。教会がもみ消した聖職者の性犯罪率が、予想を遥かに超えて多かったのだ。 聖職者自体の数が、一地域に対して多いことが数字を押し上げているのこともあると思う。

その数字に辿り着くまでの地道な地道な作業。教会関係者の名簿に休暇や移動が含まれていたら、それは犯罪を犯した合図と推測し、頁を繰りつつ拾っていく。

それが長年聖職者の犯罪を心理学的要素から追ってきた研究者のデータと見事一致。そんな物的証拠とも言えない手がかりを頼りに、孤軍奮闘している弁護士や、被害者の会の助けを得て、被害者への取材にこぎつき数年がかりで調べあげていく。

聖職者による未成年への性犯罪は、彼らに宗教や地域や親への不信を植え付け、大人になってからも誰にも言えない恥辱と、永遠に消えない怒りで悩ます。元からゲイを自覚している少年であっても、それは変わらない。
新聞記者から教会への糾弾は、地域の名誉を傷つけ、地域のつながりを断つことにもなるため、もみ消しに関わった弁護士や教会関係者から圧力を受ける。

命を狙われるとか、派手でドラマティックなことは起きない。だが、文字通り生活や人生をかけて、罵詈雑言や拒絶に立ち向かう彼らの姿は、静かに静かに胸を打つ。
信念をかけられる仕事に出会える人は、世界にどれだけいるだろう。

取材対象者の家の裏に、さりげなく教会が建っているショットがある。
いかに教会が地域に密着しているかがよくわかる。
新任局長はユダヤ人で、 彼は第三者の目で、カトリック教会の闇に気がついた。そういった人種多様なアメリカの複雑な社会構造も言葉の端々にあらわれ、勉強になる。

後半、数年前に被害者の会からボストングローブに送られた資料が局内で雲散霧消していたことが発覚。故意ではないとはいえ、それは着任間もなかった現スポットライト編集長の責任によるところだったと判明。 皆が言葉を失うなか、彼にかける局長の言葉が印象的だった。
「私たちは暗闇のなかを歩いていて、正しい道はわからない。ある日突然に光が指して自分の歩く道がわかる」

これはどんな仕事にもいえる。例えば原発などもそうだけど、事故が起こってからとんでもない過ちをおかしたことに気がつく。それは電力会社、科学者、利権を受け入れた原発村、安全神話を鵜呑みにした社会、なにも考えず惰性で生活してきたすべての人間に当てはまる。

常に考え疑問を投じ、自分で調べること。それがいかに大事かを改めて教えてくれた、教科書のような話だった。

ルーム [ヒューマンドラマ]

★満足度80点

■本当の自由とは

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ルーム スペシャル・プライス [Blu-ray]

ルーム スペシャル・プライス [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: Happinet
  • メディア: Blu-ray


唸った。 とにかく唸る。
脚本に、母親役のブリー・ラーソンに、 そしてジャックを演じたジェイコブに。

生まれたときから狭い納屋の世界しか知らないジャック。 そこから脱出したとき、誰もがほっとして、これで問題は解決したと思う。 でもそうじゃない、空さえ見たことのなかったジャックにのしかかってきた「世界」は、私たちの想像を越えてはるかに広大で、目まぐるしかった。

本当に辛いのは、解放後なのだと思い知らされる。「HAPPYなはずなのに」失った時間が徐々にジョイにのしかかり蝕んでいく。 普通に振舞って子供らしくして欲しいのに、ジャックは部屋にいたときと同じように、ずっと私のそばにいる――。

世界は広い、もっともっと好奇心をもって欲しい、やっと出れたのだから、私を束縛しないで欲しい! ジョイのもがき苦しむ姿に、監禁されていた年月の重さを知る。

でもちゃんと子供はわかってるんだよ ね。少しずつ、彼のペースで心の扉を開いていく。 急がないで、ママもゆっくり歩いて?というように、至極マイペースに。 その証拠に、部屋を見て彼は「縮んだの?」という。世界の広さに、徐々に馴染んできた証拠に。

そしてさよならを言う。 彼にとっては、大好きな母親と一緒で、 もしかしたら幸せだったのかもしれない場所に。幸せ、不幸という概念もなく過ごしていた時間に。

ジャックが部屋に行きたいと言ったときはギョッとしたけど、子供の方が幸せの本質をちゃんとわかっているのかもしれないと思った。彼に背中を押されるように、過去に決別し、やっと心の自由への一歩を踏み出すジョイの姿に、熱いものが込み上げました。

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